重症心身障害児者とは
定義
重い身体障害(肢体不自由)の他に、色々な程度の精神遅滞(知的障害)やてんかんや行動障害などを合併している方々で、昭和41年の旧厚生省の定義では、「身体的・精神的障害が重複し、かつ、それぞれの障害が重度である児童および満十八歳以上の者」となっています。
心身障害児の大島の分類という障害児施設などで使用されている分類法があり、重症心身障害児は区分1~4に相当します。
重症心身障害の主な原因
主な原因は、低酸素症または仮死などの分娩異常、染色体異常症、特殊型・その他の出生前原因、低出生体重児、新生児期高ビリルビン血症、小頭症または狭頭症、髄膜炎・脳炎後遺症、てんかん後遺症、脳外傷後遺症、その他原因不明などです。
重症心身障害児に併発してくる二次障害
主なものに、脊柱側弯症、呼吸障害、摂食障害(嚥下障害)、胃食道逆流現象(GER)、機能性イレウス(機能性腸閉塞)、排尿障害、便秘(排便障害)、骨粗鬆症と骨折、褥創(床ずれ)、低栄養状態などがあります。
超重症障害児者
心身の機能に障害があり、常に医学的管理下に置かなければ呼吸をすること、栄養を摂ることが困難な障害状態にある方たちです。
肢体不自由や知的障害を伴わない方、例えば医療的ケアがあっても走ることができる方も含め医療的ケア児者と総称されるようになっています。
重症心身障害児者からのメッセージ
(糸賀一雄先生の講演集より)
「横軸の発達」の発見
子どもが発達していく段階を見ると、1歳の子どもは2歳に、2歳が3歳にという形に、生まれてからの年月によって縦に、身体的にも精神的にも発達していきます。お母さんは、這えば立て、立てば歩めと祈り、期待し、努力されているわけです。
子ども達はたしかに伸びていきます。しかし重い障害を持った子どもは、普通の子のようには伸びません。そこにお母さん方の大きな悩みがあります。
「かけがえのない個性」形成
障害児の発達ということを考えるとき、容易ならざることだと思いました。その時に感じたのは、この人達は将来どうなるのだろう、私達はこの人達を育てて、末々どうなっていくのだろうということでした。
発達があまりにも遅く、何度教えても、いくら世話をしても、伸びないのです。伸びないままに体だけ大きくなっていくのです。
この悩みを、私達は長い年月味わってきたのですが、そのうちに、私達に希望のようなものを持たせてくれる光があることに気付きました。1歳が2歳、2歳が3歳と縦軸に伸びることを期待し、そういかないことに悩んでいたのですが、この人達は縦軸でなく横軸の中にこそ、発達の広がりがあることに気付いたのです。
ありとあらゆる発達段階のなかで、発達そのものはむしろ横の広がりが中身である、ということです。横の広がりとは、かけがえのないその人の個性です。他の何物をもっても代えることのできない個性が、あらゆる発達段階の中身をなしているということです。A子ちゃんはA子ちゃんなんだという個性が、1歳なら1歳のなかに、豊かにぐんぐんと形成されていく。
この豊かさを形成していくのが教育であり、療育なのです。療育とは、あらゆる発達段階の中にあって、その子がかけがえのない個性を形成していくプロセスであるといえます。
これは、重症心身障害児対策が私達に教えてくれた、おそらく最大の原理ではなかろうかと思います。そしてこの物事の本質ともいえる原理を、満1歳という状態が一生続くかもしれない、ぎりぎりの限界状態におかれている重症心身障害児が、その子を見守っている親や先生や医者や看護婦に気付かせたのです。
自前で光っている子ども達
私が「この子らを世の光に」と言ったのは、世の光として自前で生きている姿、太陽や星のように自分自身で光っているということです。重い子ども達は自分で光れないと考えられていたのですが、実は自分で光っていました。(中略)
毎日手のかかるこの人達は、私達に生命というものを教え、私達が堕落していくのに歯止めをかけてくれる人達です。この歯止めにこそ彼らの本当の存在理由があり、新しい社会形成の理念もそこにあります。